宮内さんは会うと必ず声をかけてくれる、優しいおじいさん。
「今日から新しい学校ですか?」
「うん。遅刻だけどね」
私をみて優しく微笑む宮内さん。
「制服似合ってますよ。気をつけて行ってきてくださいね」
「ありがとう。行ってきます」
宮内さんの前だと、自分を偽れない。
あの優しい笑顔は、あの人たちとかぶるから
マンションを出て駅に向かう
地元から電車を乗り換えて、さらに30分電車に揺られやっとたどり着く所にわざと引っ越してきた
もう2度と会わないように。
季節が季節なだけあって少し肌寒い。
この時期になると思い出す。もう戻れないあの頃を。
そんなことを思って少し笑う
今更どうあがこうとも、時間は戻らない
それはよくわかってる

