過去に虐待を受けていた私は

気付いたら男子恐怖症になっていた

直樹さんは別だけど

小学校から私立の女子校に通っていたのも

私を男性に会わせないためだって

施設長の先生が言ってた

「大丈夫……だと思います」

「そっか」

会話が終了して 部屋に沈黙が訪れる

ダメだ

何か 何か言わなきゃ

「あっ、直樹さん」

「ん?」

爽やかな笑顔で返事をする直樹さん

彼はきっと俗世間で言う

"かっこいい"の部類

そんなことを考えながら私は口を開いた

「い、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

"行ってらっしゃい"と聞いた私は部屋を後にした