【続】苦いコーヒーと甘いココア 〜バレンタインデー編〜


「ね、食べて食べて〜!」


「後でね。」


「今がいい!今じゃないと溶けちゃうかも!」


必死に訴える私に、晴樹は訝しげな視線を突き刺す。



「鈴、お前なんか入れたか?」

しまった…!


「う、ううん!なんにも!!」

両手をぶんぶん振って否定するも、晴樹のその訝しげな視線は変わらない。

それでも、包装紙を丁寧に開けると一口パクッと食べてくれた。


「やったあああ!」

今度は、心の中では収まり切らなかったガッツポーズを

全身で全力で行う。




「……………。」

冷ややかな晴樹の視線も気にしない。



でも、晴樹をガン見して、

その時を今か、今か、と待ち受ける。



「鈴、アルコール入りチョコレートだっただろ。」

ひぃ…!ばれた…!

「そ、そんなことないよ!!うん、きっと!!!」

明らかに嘘、だと言っているような態度の私に

呆れたようにため息をつく晴樹。


じぃーー…。

晴樹の変化を待つ。

ほら、酔ったらキス魔になる、とかよく言うじゃん。

ふへへ♪


じぃー…。

あ、晴樹の瞬きがゆっくりになってきた。



じぃーーー…。

あれ、晴樹が横になった。



じぃーーーーーーー…。






「……す〜」

「……す〜」



眠そうな晴樹を見ていたら

いつの間にか私も眠ってしまっていたらしい。




一つしか減っていないアルコール入りチョコレートの箱が、呆れたように


でも幸せそうに寄り添って寝る二人を、見守るように


机の上に置かれていた。




《END》