「ね、満。私は幸せだよ。」
そう言って、笑う七瀬を見るだけで昔は幸せだったのに。
今は、七瀬の笑顔もただの笑顔で。
七瀬の声もただの声で。
七瀬も、愛しい七瀬も、ただの七瀬なんだ。
「満のそばで笑えて。親友も出来て。子供も出来た。これ以上高望みしたら、ダメなんじゃないかな。」
ダメじゃない。
俺はそう言いかけた。
でも、なぜか言えなかった。
幸せは、人それぞれ…。
「ねぇ、子供生まれたら、なんて名前にする?」
「…聖奈穂(ミナホ)とか?」
「それじゃ女の子じゃん。男の子だったらどうするの。」
七瀬は、手術の話を避けた。
気が付いた。
実際は、死ぬことが怖いんだって。
必死で強がっているだけなんだって。
「水瀬。」
「苗字みたいだな。」
「満と私の名前くっつけてみたの。まっすぐな子に育って欲しい。」
水瀬……。
いいかもしれない。
響きも気に入った。
「水瀬。だな。」
「うん‼」
とりあえずは、水瀬が無事に生まれてくることを願おう。

