あの夏よりも、遠いところへ

 ◇◇

大事な話があるって台詞、よくないと思う。それだけ聞かされたこっちはどきどきして、夕食、全然美味しくないんだもん。

久々に家族4人で囲んだ食卓で、わたしだけが異様にそわそわしていた。



「――大阪に転勤が決まった」


「え……?」

「単身赴任も考えたけど、やっぱりお前たちも連れていくことにした。急な話ですまない」


ぽとりとから揚げを落としたのは、雪ちゃんのほうだった。

あまり動揺を見せない雪ちゃんが、きょうは明らかに動揺している。


「……いつなの?」


本当はお父さんに話しかけたくなんかなかったけれど、仕方ない。雪ちゃんの代わりにわたしが訊いてあげないと。


「夏休み中には引っ越しも済ませたいと思ってる」

「そんな……急すぎでしょ」

「急な話なんだ。お父さんも、きょう上司に言われたばかりなんだよ」


お父さん、会社でなにかやらかしたのかな。こんな急な転勤って普通、有り得る?


子どもって面倒くさい。だってわたしたち、完全にお父さんの事情に巻き込まれただけじゃん。

明らかに嫌そうな顔をしたわたしを、目の前に座るお母さんが睨みつけた。はいはい、ゴメンナサイ。


「小雪ちゃん、大丈夫?」


その点、雪ちゃんのことはきちんと心配するんだもん。わたしもから揚げ落としておけばよかったかな。