あの夏よりも、遠いところへ

 ◇◇

悔しかったから、夏休み初日からあの丘に向かった。

ここに来るのは2度目。最初に来たときからもう、1か月近く経っているんだな。


「……お、朝日じゃん。久しぶり」

「陽斗!」


胸が弾む。どきどきする。

1か月経っても、わたしはやっぱり、陽斗が好き。


「きょうも寝てたの?」

「うん。きょうも風が気持ちいいよ」


へらりと笑う顔、全然変わらないなあ。

ちょこんと陽斗の隣に腰かける。どきどきした。けれど彼はなんでもない顔で、あたりまえみたいにわたしを受け入れてくれた。


「ちゃんと学校行ってた?」

「行ってたよ。お母さんがうるさいんだもん」

「そっか。偉い」


そう言う陽斗は何回かさぼったくせに。ちゃんと雪ちゃんに聞いているんだから。

きょうは立川くんが来なかったと淋しそうに言う雪ちゃんの顔を、陽斗は知らないんだ。


「そういえば、北野さんとよく話すようになったよ」

「うん。雪ちゃんからよく聞いてた」

「完璧で近寄りがたかったけど、話してみると意外とかわいい女の子なんだな」


意外じゃないっての。雪ちゃんはいつだって、とってもかわいいんだよ。

でも、陽斗だけは、べつにそう思わなくったっていいのにな。

心臓がずきずき音を立てる。