あの夏よりも、遠いところへ


細い道をたらたら歩きながら、時々、ここは本当に東京なのかと疑問に思う。

東京都全土が物凄い都会というわけではない。都会なんてほんの一部だけで、あとはわりと田舎だ。

わたしは、家から徒歩15分の緑いっぱいの公立中学に、毎日こうして通っている。


それに対して雪ちゃんが通う高校は、電車で20分もかかる都心にあるらしい。わたしは行ったことはないけれど。

かわいい制服を着て、ゆるく髪を巻いて、かっこいいローファーを履いて、都会の学校に通う雪ちゃん。

……わたしは2年後、きっとそんな女子高生にはなれていないんだろうな。


「学校、行きたくないなあ……」


家もつまらないけれど、べつに学校も好きじゃない。

なんのために勉強しているんだろう? 高校に行くため?

……わたし、ちゃんと高校に行くのかな。働いて、あの家を出たいな。そんなこと言ったらまたお母さんに怒鳴られるかもしれないな。


考えれば考えるほど、なんだか全部がどうでもよくなってくる。

だって、上を向けば空はこんなにも高くて、青いんだよ。わたしはなにを悩んでいるんだろう。こんなちっぽけな場所で、なにをしているんだろう。


どうしてもこのもやもやを吹き飛ばしたくて、気付けば地面を蹴っていた。

走るのは得意じゃないけれど、頬を撫でる風が気持ち良くて、どんどん加速した。もう7月なのに風が冷たいな。

向かう先は、学校とはまったくの逆方向。