驚きも、抵抗も無かった。不思議だけどさ。なんだろう。最初から、たぶん、こうなる気がしていたのかも。

下心ってのとは少し違う。これはとても、自然な流れだと思ったんだ。


シャワーは俺が先に浴びた。緊張はしなかった。ただなんとなく手持ち無沙汰で、彼女がシャワーを浴びている間はずっと、スマホのゲームに明け暮れていた。

それを3回したところで、シャワーを終え、真っ白な肌を少し蒸気させた彼女が、俺の頬に触れる。


「……サヤ」


そう呼んだのは無意識だった。彼女は少し驚いた顔をしたけれど、また微笑んだ。

その手を掴み、やわらかい指にそっとくちづけを落とす。分からなかった。これが良いことなのか、悪いことなのか。正解なのか、間違いなのか。


「サヤ。めっちゃ、めっちゃな……好きやで」


優しく触れた。ちゃんとできてたかは分かんねえけど、努力はした。

サヤと呼ぶ俺にも、彼女はきちんと答えてくれた。もう最後のほうは、俺、サヤを抱いていたと思う。


セックスのあと、無防備に素肌を晒して、彼女はすうすうと寝息を立てていた。真っ白だ。小雪って名前、すげえぴったりだと思う。

いま、何時だろう。ラブホテルってのにははじめて泊まったけど、窓が無いから、なにも分かんねえんだな。すげえや。


小雪さんはたぶん、まだ別れた彼氏のことが好きなのだろうと思う。北野の初恋の男。俺は知らねえやつだけど。

だから彼女とはなにも始まらない。俺もたぶん、このひとを好きになったわけじゃねえよ。


不思議と気持ちは軽かった。小雪さんはいったいどんな魔法を使ったのだろう?

分かんねえ。分かんねえことだらけだ。でも、いいんだ。いまはそれで、いいんだ。