少しの沈黙が落ちた。そろそろもうダメだと思った瞬間、口を開いてくれたのは小雪さんのほうだった。
「……ねえ。朝日ちゃんって、学校でどんな感じ?」
「えっと……まあ、普通っす」
まったく普通じゃねえけど。群れねえし、むすっとしてるし、しゃべらねえし。
けど、いま北野について語っている余裕はどこにもない。
「私ね、心配してるんだ。朝日ちゃんのこと」
「心配?」
「うん。朝日ちゃん、ちょっと難しい子でしょ? 真っ直ぐなんだよね、すごく。痛いくらい」
ああ、なるほど。それはすげえ分かる。北野はなんていうか、死んでも嘘だけはつかねえって感じ。
小雪さんの横顔を盗み見た。彼女は困ったように笑って、まぶしそうに目を細めていた。その顔はめちゃくちゃサヤに似ていて、ずっとは見ていられねえよ。
「……私、ずっと、朝日ちゃんが羨ましかったの」
長い睫毛が頬に影を作った。
「いつでも自分に正直で、好き嫌いがはっきりしていて。かっこいいよね、朝日ちゃん」
「それは思います。めっちゃ……かっこええっすよ」
率直な感想だ。片瀬さんのために啖呵を切ったのも、ワン・オン・ワンで本気になっていたのも、めちゃくちゃかっこよかった。
嘘がなくて真っ直ぐな、よく分かんねえやつ。



