混乱している。顔なんて、もう見れねえ。
それなのに、俺のそんな気持ちなんて知らず、小雪さんは俺の右側に座って、優しく笑いかけたりするんだ。ずりいよな。
「どうしてここにいるの? もしかして蓮くん、岸谷先生と知り合い?」
岸谷って、サヤの苗字だ。動悸がやべえ。なんかもう、呼吸するのもしんどい。
「あ、昔……ちょっと」
「そうなんだあ。じゃあもしかして、娘さんにも会ったことある?」
心臓が跳ねた。サヤのことだ。
「な……んで、すか」
「なんかね、似てるって言われたの。びっくりされちゃった。でも、もう亡くなってるって」
鼓動の音が頭にまで響いて、めまいがした。
なんと答えればいいのか分からない。色々なことが一気に起きすぎて、全然、頭が追いつかねえよ。
「……似てる、思います」
声が震えた。似すぎて混乱しているなんて、口が裂けても言えねえや。
「やっぱりそうなんだね。他人の空似って本当にあるんだねえ」
「はい」
はいってなんだよ、俺。しっかりしゃべれよ。
手、めちゃくちゃ汗かいてんじゃん。どうしよう。すげえ逃げたい。



