「……会いたい」


6年間ずっと思っていたことを、口に出してみた。


「サヤ、会いたい」


まだ俺は17歳になるかならねえかのガキで、まだまだ、あのころのサヤには追い付けていないけど。

背も伸びたし、ピアノだって、ずいぶん弾けるようになった。クラスの女子にも褒めてもらったんだぜ。


だから、サヤ。もう一度俺の前に現れて、笑って。

もうあんな淋しそうな顔じゃなくて、幸せな顔が見てえよ。

バスケも、プールも、連弾も、まだ俺、全部覚えてるからさ。


どこまでも女々しい自分が嫌で、もう一度構えて、シュートを撃った。

ボールはきれいに輪っかをくぐる。くぐって、重力に逆らわず、すとんと地面に落ちる。


一瞬、時が止まったような気がした。

スローモーションってのを生まれてはじめて体験した。落ちたのは自分じゃなくて、ボールだったんだけど。

すげえ。すげえよ、サヤ。やっぱり教えたかったな、バスケ。



「――ナイスシュート」


静寂にぽとりと落とされた声が、止まった時間を動かした。


「やるじゃん。やっぱりこっそり見に行かないとダメだね」

「……き、たの」


スクールバッグを右肩に掛けた彼女は、やっぱりきょうも、真っ直ぐな目をしている。