恋は凛々しく!

◇◆


その日の夜、あたしは塾でその先生の講義を聞いていた。


教室には30人を超す生徒がいる。


教壇に立つ先生にとって、あたしは大勢の中の1人でしかない。


距離が遠すぎるよねぇ。


頬杖をついてぼんやりと黒板の数式を眺めていると、堤先生はさっさと消して次の問題に取りかかっていた。


あ、やばい。


ノートに写せなかった。


はあ……。


なにやってんだか、あたし。


授業が終わり、のんびり筆記用具を片づけていると、またしても山下が近づいてきた。


よりによって、塾まで同じだなんて、この腐れ縁を本気で恨みたくなる。