そうなのだ。
もうすぐバレンタインなのだ。
バレンタインと聞くと、思いを伝えたいという純粋な気持ちと、過去の苦い思い出が混ざり合って、複雑な気分になってしまう。
「どうしようかなぁ……」
だって。
もし先生が一瞬でも迷惑そうな顔をしたら?
受け取ってくれなかったら?
「生徒からチョコもらってイヤな先生って、いないと思うけどなぁ」
綾の言うこともわかるけど。
「でも、義理と本命では違うんじゃない?」
「うーん、たしかにね。まあ、でもあたしだったら渡すかな。だって好きだったら、思い、伝えたいもん」
綾のその単純明快な理由が、妙に心に響いた。

