「やぎ座、今日運勢いいって」
綾は携帯で星占いをチェックしながら、あたしに言った。
「あんた、さっきのあたしの話、聞いてた?占いなんてね、ろくなもんじゃないの」
あたしは頬杖をついたまま、教室を見渡し、男子のあるグループのところで目が止まった。
はぁ……。
すると、あたしの視線に気づいたのか、そのグループの中の1人、山下がにやにやしながらこちらに向かって歩いてきた。
「今、おれに見とれてたろ?」
そう言って、あたしの前に席に腰かけ、顔を近づけてきた。
「ようやく、おれの良さに気づいたか?」
「気づきたくもない」
「まあまあ、そんなに照れなくても」
「1ミクロンたりとも照れてません」
「わかったわかった。かわいいハニーちゃん」
そう言うと、山下はあたしにウインクして、男子の輪の中に戻っていった。

