「……ありがと」


直江くんは小さな声でそう呟くと、あたしの手からチョコを受け取った。


はっと顔を上げた。


「おお!受け取ったー!」


「ヒューヒュー!お熱いねぇ!」


周りの男子たちは勝手に盛り上がっていたけれど、直江くんは頬を真っ赤に染めて目を伏せていた。


そんな中あたしは、クラスメイトたちの視線に耐えられず、走って教室を出た。


よかった。


受け取ってくれた。


それだけで、嬉しかった。


体にまとわりつく照れくささを振り切るように、家まで走って帰ったのだった。