山下は黙ったまま、あたしの手を引いて歩いた。
まるで、とぼとぼ歩く幼い妹の手を引くお兄ちゃんのように。
「……堤先生、三上先生と結婚するんだって」
ぽつり呟いたあたしの言葉に、山下は立ち止まった。
「え?」
「たまたま聞いちゃったんだ。中里先生と三上先生の会話」
「そうか……」
「……だからね、チョコ、渡せなかった」
目に溜まっていた涙が、ほろりとこぼれ落ちた。
「……そうか」
そう言うと、山下はあたしの頬にそっと触れ、優しく涙を拭った。
そして。
「おれ、藤枝のこと、ずっと好きだった」
山下は、穏やかな表情を浮かべて、あたしを見つめている。
これは、いつものふざけたやつじゃない。
この告白は、本気だ。

