「堤先生、そこは譲らなかったんですね」
「まあ、私も行ってみたかったしね」
「いいですねぇ。スペイン。わたしも行きたいなぁ」
三上先生と中里先生は、教室の電気を消して楽しそうに話をしながら階段を下りて行った。
トイレに残されたあたしは、体中の力が抜けて立っているのがやっとだった。
『行けたらいいなぁと思って。見てみたいものがあるんだよ』
『サグラダ・ファミリア……あれ?知らない?もうちょっと勉強しろ』
堤先生の声と笑顔が蘇る。
……うそ。
うそでしょ?
結婚なんて。
信じられない。
しかも、相手が三上先生だなんて。
そんな……。
あんまりだよ。

