「な、なによ」
「いや、別に」
山下は、何気に空を仰ぎ「あ~あ」と気のない声を出した。
そして、ぼんやりと雲を眺めながら、
「ま、さりげなくだな」
と言った。
「え?」
「塾といえど相手は先生なわけだしさ。生徒からの本命チョコってのは、けっこう戸惑うと思うぜ?」
……うっ。
そんなはっきりと……。
「ま、茶封筒かなんかに入れて、軽く渡すくらいがいいんじゃね?」
そう言うと、山下はふぅと息を吐き出した。
ちょっと、意外だった。
こいつはあほだと思っていたけれど。
山下の言うとおりだ。
呆然と山下を見ていると。
「なんだよ」
「う、ううん。別に」
「ま、頑張りな。応援してるぜ、ハニーちゃん」
そう言うと、山下は軽く手を上げ、去って行った。

