バレンタインデー当日、帰りの会が終わった直後、あたしはトクントクンと高鳴る鼓動を体中に感じながら直江くんのところまで行き、かわいくラッピングしたチョコを、うつむいたまま腕をぴんと伸ばして差し出した。


「これ、受け取ってください」


体中が心臓になっていた。


耳まで赤くなっているのがわかった。


一方、この劇的な光景にクラス中がざわついた。


「おうおうおうおう」


「思い切ったなぁ、藤枝(ふじえだ)」


「ヒューヒュー!」


「おい、どうすんだよ、直江」


茶化す男子たちの雑音が、嫌でも耳に入る。


直江くん、どっち?


受け取ってくれるの?くれないの?


うつむいたままのあたしにとって、その時間はとても長く感じた。


その時。