「みんなでお話ししてただけよ。それより遥斗君は忘れ物でもしたの?」

「うん。綾ちゃんを忘れたの。一緒に帰ろうと思って、教室の前で待ってたんだ」

遥斗君の言葉に女子達はざわめき始める。

「そ、そう。じゃあ、気をつけて帰ってね。私達もこれで失礼するわ」

一ノ城さんは早口で言い終えると、まわりの女子を連れて逃げるように立ち去った。

足音も聞こえなくなり、教室の中はしんと静まり返る。


「遥斗君……」

「ん?」

「……ありがと」

「どういたしましてっ。じゃ、帰ろっか」

あたしはうん、と頷いて遥斗君と一緒に教室を出た。