はぁ、どうしよう。

今までなら、被害に合うのはあたしだけですんだけど、これ以上嫌がらせがひどくなったら龍に迷惑がかかるかも。

龍となるべくくっつかないようにしよう。

あたしはそう心に決めて前を見据えた。

「あら、ずいぶんと生意気な顔をするのね」

一ノ城さんは前回と同じように腕を振り上げた。

ぶたれるっ。

そう思ったときには、あたしは反射的に目をつぶっていた。

けれど、予想していた痛みは頬に襲ってこなかった。

どうしたものかと、あたしはそっと目を開ける。

すると、一ノ城さんがひきつった笑みを浮かべて教室のドアの方を見ていた。