「ひなったら、もーいいって言ってんのに。
んじゃあ、こっちの方が少し軽いから」



「あ、はいっ」



寝起きならブランチはパンにしてあげようと買った、食パンの入ってる右側のレジ袋を慎吾くんは差し出してきた。




「はいっ
いいですよ、手を離して」



「ん、ちょっと待って。今手ぇ抜くから…」



だったら先に自分が持てよって話になりそうだけど。
中身がいっぱいで持ち手部分が狭くなってるところを、私はどうにか自分の指を通して受け取ろうとした。


…あ、やっぱり結構重い。


私は身を寄せて両手で抱えるようにレジ袋を受け取ると、慎吾くんは狭い持ち手部分からゆっくり手の指を抜いた。



「よ いせっと。
…あ」



何だかオオゴトみたいな感じになっちゃったけど、これでようやく私の手に持ち替える事ができた。

だけど、何故か慎吾くんはレジ袋から抜いた右手をジッと見ている。



「あ、手が痛かった?
ごめんねっ、袋重いから…っ」



「…いや、そうじゃなくて。
手ぇ抜いた時に、ひなの胸にあたっちゃった。
あはっ、ラッキー」



「っ!!?」



あまりの発言に、私は思わず自分の胸を隠すように手をあてた。


そんな事なんて、言わなければ私だって気づかなかったのにぃっ!


って!言うか!

普通そんな事、面と向かって言うーーっ!?




ケラケラと無邪気に笑いながら、慎吾くんは荷物を抱えてスーパーの出入り口へと歩いて行く。


…そんな彼の後ろ姿を、私は真っ赤になって追いかける羽目になったわけだ。



「~~~~~~っ」



んもーぉ!!
調子狂っちゃうよぉ!!