セッテはもう一つのカップを持ち上げ、同じように凝視する。


段ボールを開ける前に、念のため手袋をしておいてよかった。


犯人の指紋が、どこかについているかもしれない。


もちろん、そんなヘマはしないとは思うが……



「ご本人と警察に言った方がええんちゃいますか。

もしホンマに毒なら、殺人未遂事件ですよ」


「ええ、わかってます……でも、できるだけ大事にしたくないと、ご本人が……」


「そんなこと言っても、殺されたら何にもならへん。

説得しましょ、新郎づたいでもいいから。

式は中止して、警察に相談した方がええ」



まりあは考え込んだあと、苦しそうに言葉を搾り出した。



「できません」


「どうして──」



式が中止になれば、キャンセル料が発生するとはいえ、式場のダメージも大きい。


なにしろ、今までの準備が全て水の泡になる。