「ちょっと、待ってください」



微かだが、何か甘い匂いがする。


セッテは一つのカップを取り出し、凝視した。


蛍光灯に照らされたカップの底に、歪みが生じる。


本来ならば、つるりと凹凸のないはずのそこには、明らかに異物が塗られたあとがあった。


そして、そこから発しているのは、微かなアーモンドのようなにおい……。



「青酸……?」



まさか。


つ、と背中を冷たいものが駆け抜ける。


自分の発した言葉の不吉さが、まりあの声を震わせた。



「いや────っ」



振り返ったセッテの目に飛び込んだのは、1枚のカードだった。


まりあが勝手に見て、落としたそれはひらりとセッテの前に着地する。


そこには、こう書かれていた。