「織田様、お待たせいたしました」



まりあが試着室からやってきた。


セッテは織田をうながし、一緒にそちらへ向かう。


中では、新作のドレスを試着した花嫁が、鏡の前でくるくると回り、自分の姿を確認していた。



「あっ、どーかなヒコちゃん。
あたしこれ、気に入ったんだけど」



ヒコちゃん、と言うのは春彦のことらしい。


新婦、甲斐陽子は丸顔の優しい印象の女性で、一般的に可愛いとされる部類に間違いない。



「んー……前の方が普通じゃないか?」


「普通じゃ嫌なんだって!
こっちの方が友達とかぶらなくていいよ!」



陽子が今着ているのは、エンパイア風のドレスだった。


腰ではなく胸の下に切りかえしがあって、スカート部分はふくらまず、さらりと床に流れている。


漫画の古代ローマ人みたいだ、とセッテは思った。