妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~

 呉羽はそはや丸にもたれたまま、目だけで猫又を見た。
 そはや丸の尋常でない妖気を警戒し、猫又は襲いかかる機会を窺っている。
 その様子は、まさに獲物を狙う獰猛な猫そのものだが、ヒトの片鱗も、まだ残っている。
 普段はそれなりに、可愛らしい娘なのだろう。

「・・・・・・今は猫又だが、戻れば只の可愛らしい娘だ。男よりも良いだろ?」

 流れる血のせいで、半ばぼんやりしながら、呉羽は言った。
 そはや丸の言わんとしていることは、よくわからない。
 そんな呉羽に、そはや丸は、ち、と小さく舌打ちした。

「何とも思ってない奴に接吻するのは、気持ち悪いんだよ。後々厄介なことになるしな」

「ああ・・・・・・。お前、『気』に敏感なんだな」

 女は『陰』の気である。
 男であるそはや丸は、女子の陰の気を吸うのを嫌がっているのだと呉羽は思い、そはや丸の肩に手を置いて、起き上がろうとした。

「そもそもお前は、男だけど『陽』じゃなくて『妖気』だろ。別に良いじゃないか」

 その辺りのことは、呉羽にはわからない。
 面倒臭い拘りだな、としか思えず、しかしそはや丸が吸い出すのを拒否する以上、呉羽がやらねばならない。
 仕方なく呉羽は、そはや丸から妖気をわけてもらうべく、懐から何枚かの札を取り出した。