「あのさ、お姉さんなら、そはや丸がほたるさんを媒体にするために何したか、わかるでしょ?」

「そうだなぁ。ま、妖気は必要だから、まず女官殿に妖気を送り込まないといかん」

「その方法を考えれば、ほたるさんの態度もわかるでしょ?」

 ちょっと恥ずかしそうに、烏丸は羽で己の顔を覆いながら言う。
 その態度に、呉羽は笑顔になって烏丸を抱き上げる。

「可愛いなぁ、お前は」

 話が続かない。
 というより、呉羽には烏丸の言わんとしていることが、さっぱりわからないのだ。
 ほたるの、呉羽に対する態度に関係があるとも全く思えない内容なため、今の話には興味もない。

 そんなことより、烏丸の可愛い仕草のほうが、よっぽど興味のある事柄なのだ。

「お、お姉さん~。もぅ、鈍感すぎ~~っ」

 むぎゅうっと呉羽に抱きしめられて、わたわたと暴れながら、烏丸が言う。
 途端に烏丸目掛けて、そはや丸から転がっていた小さな木の実が飛んできた。

「きゃんっ」

「うるせぇ烏だな。焼き鳥にされてぇのか」

 射るような目で睨まれ、烏丸は、また涙目で呉羽にしがみつく。
 恐ろしいことを言われ、えぐえぐとしゃくり上げている烏丸は、本来なら盛大に泣き叫びたいところだが、今そんなことをすれば、本気で焼き鳥にされかねない。
 必死で我慢しながらしゃくり上げる烏丸を、呉羽はまた、ぎゅっと抱きしめた。