妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~

「護符が全く効かないわけじゃない・・・・・・。出来る限りのことはする」

 そはや丸を押さえながら言った呉羽は、ほたるが頬に貼り付いた護符を引き剥がすのを見た。
 鞘ごとそはや丸を構え、ほたるを見据える。

「く、呉羽様・・・・・・。あなた様がいなくなったら、ちょっとは彼は、わたくしを見てくださるかしら・・・・・・」

 懐剣の切っ先を呉羽に向け、ほたるが言う。

「女官殿。そはや丸は・・・・・・」

 刀だ、と言おうとした呉羽は、次の瞬間目を見開いた。
 ほたるの目から、涙がこぼれたのだ。

「にょ、女官殿・・・・・・」

「呉羽様。わたくし・・・・・・わたくし、もうどうしていいのか。このようなこと、しても詮無きことだと、頭ではわかっております。でも、もう・・・・・・。ただ心が苦しくて。憎くて悔しくて、どうしようもないのです」

 ぼろぼろと涙をこぼしながら、ほたるは訴える。
 それは妖に操られた者が助けを求める姿だ。

 だが、呉羽は迷った。
 動きは止められても、やはりほたるの中に入り込んでいる妖の気は抜かねばならない。
 最悪呉羽が吸い出そうと思っていたが、このほたるの様子を見ていると、自信がなくなってしまった。

 ほたるの気持ちは、呉羽の気持ちに通じるところがあるのだ。
 これほどまでに、そはや丸を想っているほたるの気持ちが染みた気を、己に入れて大丈夫だろうか。