警察に話しかけられても俺の心は救急車のほうに向いていた。 ………救急車は走り出さない。 走り出す気配もない。 「あの」 「はい?」 「なんで、あの救急車は病院行かないんですか」 「……あぁ…」 聞いてみたけど、俺は知っている。 救急車は、助からない人を乗せては走り出さないことを。 違う、と言ってほしかった。 「………乃愛に、会わせてください」 「…えぇ…どうぞ」 ふらっ、とめまいがした。