そういや、おじさんはどうしたんだろう?

いつも一番風呂はおじさんと決まっているのに、今日は俺が一番だった。

一口齧った桃はまだほのかに酸味が残ってはいたが初夏を思わせるさわやかな味がした。

これなら、たばこを吸う前に食べたほうがなおおいしかっただろうと思う。

「おばさん、今夜はおじさん、帰りが遅いの?」

桃を齧りながら聞くと、

「そうさねえ、どうしたかねえ、あの人は。帰りが遅い時はいつも銀行でなにかあったときだからね。まあ、あんたがそんな心配をする必要はないさね。しばらくしたら帰ってくるでしょ。」

そう言って笑った。