「ごめんごめん、はやく勝也くんに会いたいなと思って急いで家に向かおうとしてて」
もう少し拗ねた顔を見たいけど、可哀想だから素直に謝った。
「それなら許す。ご飯も用意してあるよ!」
「ありがとう。
何か飲み物でも買ってく?」
「あ、ちゃんとビールも買って冷やしてあるよ!」
「優秀すぎ。ありがとう。
じゃあお家にそのまま向かおうか」
先程までの拗ねた表情から一変して、嬉しそうに顔をクシャッとさせて笑う彼。
なんだか無性に触れたくなって、どちらともなく手を繋いで歩き出す。
触れた部分の勝也くんの温度が心地いい。
いつの間にか、隣で並ぶ姿がアンバランスじゃないかなんてことは考えなくなったことにふと気づいた。
2人の重ねた時間の長さがそうさせたんだろう。
「あ、そう言えば今日村上に報告したらおめでとうって言ってたよ」
「あ、先輩も喜んでくれてた。みんな優しいね。
またみんなで飲みたいな〜」
「それ、私も思ってた」
みんな同じ気持ちでいるのが嬉しくて、歯痒さにふふっと笑いが溢れた。
冷たい風が髪を掠めるけど、そんなことが気にならないくらい心があったかい。
「千絵さん、よく笑うようになったね」
嬉しそうに横目でこちらを見ながら彼が呟いた。
「そうかな?あんまり気にしてなかったけど、勝也くんといると楽しいんだろうね。
村上にも優しい顔してるってこの間言われた」
「それ、何よりも嬉しい言葉。
これからもずっと隣で笑ってて」
彼の愛らしい言葉にまた笑いが溢れた。
「うん。勝也くんにも笑っててほしいな」
「うん。心配しなくても一緒にいるだけでにやけちゃうから安心して」
この子のまっすぐな愛情を受け止めて、あたしも不器用なりに愛情を注げたらいいな。
以前の自分なら到底考えもしない思いを噛み締めながらゆっくり人の少ない家へと続く一本道を歩いた。
fin

