いつもどおりに家を出て、気がつけばあたしの足は早足になっていた。

目を凝らせばすでにあの人はあの場所で待っていた。

「ごめんなさい、待たせてしまって。」

最後は走ってきたので、息が切れる。

「そんなに急ぐことないのに。」

そう言う、彼の瞳は優しい。

「実は、出掛けに兄に聞かれたんです。」

彼の顔が瞬間険しくなる。

「何を聞かれたの?」

「浩平さんときぬたやに入ったことが噂になっていると。ほんとのところはどうなのかと。」

「で、君はなんて言ったの?」

「即答はしませんでした。あたしと噂とどちらを信じるのかを問うて、兄は話せるときになったら話せと言っていました。」

少し心配になって、彼の顔を見た。

彼は腕を組み、あごをなでながら、しばし考えていた。

そして言った。