しかし、今のはいったいなんだったのか。

と、足元を見ると下駄がなくなっている。

「エ?え?ど、どこ?どういうこと?」

何がなんだかわからず、あたりに目をやれば、見事、鼻緒の切れた下駄がころがっている。

「うわぁ、何てことよぉ。」

一気に現実が押し寄せてきた。

いったいどうしろっていうの?

何だってこんな日に、鼻緒が切れちゃうのかしら?

更に、痛みが押し寄せてくる。

思わず、涙が出そうになるのを必死でこらえて、のろのろと下駄のところまで歩く。

もう足袋も袴も、びしょびしょだ。

あんなに濡れないように気をつけていたのにな。

そんなことを、考えながら、雨の中、鼻緒を直し始めた。