麦湯のお代わりが来たのでしばし話を止め、君もどう?と注いでくれた。

「その後、一高に受かって周りはすごく喜んでくれたけど、家から通うのは無理なので、縁者の紹介で今の下宿を紹介してもらったんだ。家から出はしたけど、まだまだ面倒は見てもらっている身だからね。半端といえば半端だわな。」

そういえば、と昔の父と兄の会話を思い出して話してみた。

「でも、兄は父との話で佐脇はよくできたやつだ、と言っていました。父もお前の友達にしてはできてる男だ、というようなことを話していましたよ?私はあの時、内容がよくわからなかったので、聞き流していましたけど、そうか、あれは佐脇さんのこと話していたのね。」

ようやく合点がいった。

「それは、恐縮ですね。」

といくらか苦笑気味だ。

何故なのか、心の中はひどく落ち着いていた。

身の上話を聞いてびっくりはしたけれど、それ以上に、この人にあたしは強い親しみを持った。

もっと、知りたいと確かに思った。

もっと、もっと。