大学に通うためアパートに一人暮らしを始めた。





隣の人は彼女と二人暮らし。





隣の彼は安春さん…。






「今日は奥さんいないの?」





「奥さん仕事…。だから心配ない…。」





「ヤス…。だからやっぱりやめよう…。」





言葉とは裏腹に身体は…。





「無理…。」





ずるい。貴方にとっては私なんてただの小娘でしょ?





口づけは深まる。






心も身体もおかしくなって、とろけてしまう。
いっそのこと全部なかったことになればいいのに。





引っ越したあの日…。挨拶に行って、キスをされた…。
遊びなんてわかってるのにやめられない…。





もう中毒…。
短い時間の毒のある甘い味…。





時計の音が響いた。






「帰る…。ん?」






最後にキスをせがんでも…。





本当に貴方は私のところには来ない。





知っている。






でも、それでもいいから。





日の当たらない部屋には密かな音だけが残る。





甘い痺れだけ残して…。





ガチャン…。






ドアの閉まる古い金具の音が響いた。





その合図に寂しさを覚える。





罪悪感はいつの間にか薄れて閉まって…。





いつしか…。






私も何処かに消えていくんだろうな…。





古びたアパートの窓からタバコを吸いながら隣を見る…。





奥さんの声…。






煙りは空気に溶けていく。





肺を満たすのはただの煙り。





栄養も何もない。





ただ肺を満たす。





お腹は満たされない。





それでも吸いながら隣を見る…。





それを気持ちよいと思うのは何故だろう…。





それでも、また吸いたくなる。





隣の窓が開く…。





同じ煙りが流れてきた。





ゆっくりと少しずつ肺に入り込む。





あぁ…。






私はこの煙りが好き…。





止めたくてもやめられない…。





そう私はこの煙りが好き…。





隣人アパート