しばらくして戻ってきたタマの両手には、よく冷えた缶ビールがあった。
 意外だった。
 タマは俺の隣りにすとん座ると、缶ビールを一本、渡してきた。
 そして、何も言わずに缶を開けようとする。
 よく飲んでるのかな?
 いや、違う。
 タマは不用意に缶を開けて、ぷしゅっと吹き出した泡に慌てている。

 俺はといえば、親に隠れて何度か飲んでたから、吹き出す泡に慌てることなく缶に口をつける。
 泡をすすってから、ゆっくりと中身を一口。
 ビールの苦みが喉につき刺さる。
 いまはその苦さにもっと串刺しにされたかった。
 そうすることで、心に刺さった苦さも一緒に飲み込めるように感じたから。
 ――後から考えると、これは自傷行為だったのかもしれない。

 俺はがぶがぶとビールを飲んだ。
 タマも慌ててビールを飲む。
 ビールはそうして飲まないといけないと思ったのかも知れない。
 タマはむせこんだ。
 俺はかっこよく飲み干した。
 が、途端にでっかいゲップをしてしまった。
 ビールが鼻にしみて涙目になった。
 タマは大笑いした。
 俺も笑った。
 しばらく二人で笑い続けた。
 早々にアルコールの酔いが回ってくる。
 タマの頬が淡く染まる。
 俺の顔も、きっと同じようになっているだろう。