エルガと話すのをやめ、それぞれのテントへ再び戻った後、私は二ヶ月前の彼の言葉を思い出していた。


『お前ら奴隷が、何を思い、考え、どう生きるのか。俺はそれを、奴隷屋の店主として、見ているだけだ』


…もしかしたら、あの言葉が全てなのかもしれない。

彼は私達奴隷の生き様を見届けるために、この奴隷屋を営んでいるのかもしれない。


そう思うと、趣味だという表現も頷ける。

けれど、やはり悪趣味だなと思わずにはいられなかった。






「…ねえ、テン」


移動を始めて四日目の夜、隣で横になったテンに声をかけた。


「…なに?ロジンカちゃん」


もぞもぞと身体を動かして、テンがこちらを向く。

目があって、私達は周りの子供達を起こさないよう、小さく笑い合った。


「…いつも、こんな風に移動してるの?」

「こんな風って?」

「『届け屋』っていう人達に手紙をもらってから、ってこと」


私が答えると、テンは考えるように上を向いた。