「ありがとう、おねえちゃん」


…どうやら、この少女は。

彼らに、『友達』という言葉を教えてしまったらしい。


突然感謝された少女は、戸惑っていた。

そんな彼女に構うことなく、テンはまた一歩踏み出す。


「ねえ、夜の外は怖いよ、危ないよ。朝になって、もう一度考えようよ。みんなで考えよう。お腹もすいたでしょ」


にこにこと微笑まれ、赤髪の少女は唇を噛む。

腹が立っているような、悔しいような、納得のいかない顔をしていた。


「ぼくたち、おねえちゃんともっと話してみたかったんだ」


すると、奥にいた五歳くらいの少女、エリーが「わたしも!」と言って、少女へ駆け寄った。

ローブの裾をくい、と掴んで、少女へ無邪気な笑顔を向けた。


「おねえちゃんの髪、とっても綺麗!あのね、わたし、前にお兄ちゃんと見たことがあるよ。おねえちゃんの髪に、そっくりな色の花」


赤髪の少女の瞳が、見開かれる。

『お兄ちゃん』は、離散したエリーの一族の、大切なひとりだ。