私は何度も首を横に振り、「いいえ」と僅かに震えた声で返事をした。


「こちらこそ…この約束こそが、私の生きる目的でしたから。…こうして無事届けることができて、よかった」


ジェイドの隣で、ルトは静かに頬杖をついて、彼女を見ていた。

その目は、何もかもを包み込むような優しさがあって。

…エルガ。

彼女は、このひとに愛されて生きているわ。


奴隷だった女の未来の姿としては、今のジェイドはとても珍しい。

他人に胸を張れるものではないとしても、大人の女として職を持ち、愛するひとに愛され、彼女は美しいままに生きている。

何年も探し続けたひとが、幸せそうにしてくれていることが、私は嬉しかった。


ジェイドは目元を拭うと、私をまっすぐに見つめ直した。


「ルトに買われて、エルガの奴隷屋を去ることになって…もう、二度と会えないって思っていたの。本当に…ずっと」


…当然だ。

奴隷と店主など、奴隷が店を去ってしまえばそれまでの関係。

それから先、お互いが死のうが生きようが知る由もないのだ。

…だから、私とエルガ、そしてジェイドのような繋がりは、他では存在しないだろう。