若き店主と囚われの薔薇



「…………」


しん、とテント内が静まり返る。

…きっとあの客は明日、買っていくつもりなのだろう。


この子供達のなかの、誰かを。


それをわかっているのか、子供達の瞳には意志が宿っていた。

…怯えでは、ない。

それとは全く、違うもの。

この子供達は、『染まっている』のだ。

もう自分は、この世界でしか生きていけないことを知っている。

貴族たちに買われ、どうにか機嫌をとって養ってもらうしかないことも。


その瞳にある意志が、とてつもなく強いものであること。


俺はもう、怖いくらいに知っていた。





夕方になり、店を閉め始めた頃。

あの赤髪の少女が戻ってきた。


「………」


押し黙り、目を伏せてテントのなかへ入ってくる。

何も履いていない裸足は、傷だらけだった。