「…………」
しん、とテント内が静まり返る。
…きっとあの客は明日、買っていくつもりなのだろう。
この子供達のなかの、誰かを。
それをわかっているのか、子供達の瞳には意志が宿っていた。
…怯えでは、ない。
それとは全く、違うもの。
この子供達は、『染まっている』のだ。
もう自分は、この世界でしか生きていけないことを知っている。
貴族たちに買われ、どうにか機嫌をとって養ってもらうしかないことも。
その瞳にある意志が、とてつもなく強いものであること。
俺はもう、怖いくらいに知っていた。
*
夕方になり、店を閉め始めた頃。
あの赤髪の少女が戻ってきた。
「………」
押し黙り、目を伏せてテントのなかへ入ってくる。
何も履いていない裸足は、傷だらけだった。



