テンは俺の手にあった鞄を、すんなりと持ってくれた。
大事そうに、大事そうに持っているところを見ると、きっと俺が宝石商をしていることにも、気づいていたのだろう。
他の子供達も、俺に先導してテントを開けたり、ロジンカのために場所を開けたりした。
…成長、なのだろうか。
賢い子供達だ。
俺がこの店で世話をしてやっている間にも、彼らは確実に成長して行く。
テンは、出会ったばかりの頃より、少しばかり背が伸びた。
平民の子供に比べれば、成長の速さが遅いのは当たり前だが。
それでも、彼らはここで、しっかりと大人に近づこうとしている。
…その成長を感じてうれしくなるなんて、まるで父親のような心境なのが不思議で、我ながら笑えた。
テントの中で、ロジンカをそっと寝かせる。
その様子を、クエイトは感情の読み取れない瞳で見つめていた。
子供達がロジンカの寝顔を見てホッと息をつく中、俺はクエイトへ向き直った。
「…………」
「ビストール様」
「………ああ」
彼は静かに、返事をした。



