若き店主と囚われの薔薇



「…ロジンカちゃん…うぅ、よかったぁぁ〜」


終いには、わんわんと泣き出してしまう。

…テンは本当に、ロジンカに懐いているから。

いつもふたりが隣同士で寝ているのは、俺も知っていた。

ロジンカが俺を探しに、テントから出たとき、テンは気づいていたということか。


俺が宝石商の仕事をするときは、いつも子供達が寝静まった夜だ。

子供達が寝ているテントから、そう遠くない場所に自分のテントを張り、客と会う。

そのことを子供達は気づいていないと、俺は今まで思っていたが。


…この様子だと、実は皆、気づいていたのかもしれない。

俺とロジンカがいなくなったことに気づき、心配になって皆で起きていたのかもしれない。


俺の周りに駆け寄ってきて、ロジンカを心配したり、俺の足にすり寄ってきたり。

…まるで家族のようだと、俺はぼんやりと思った。



「エルガどの」

近くから声がして、そちらへ振り返る。

見えたのは、馬車から降りてこちらを見つめる、クエイトだった。