「…この子達は、もう『染まっている』のね。狂わずにこの世界で生きていくには、そうするしかないこと。知ってる顔だわ」
女の手が、不意にひとりの子供へと伸びる。
子供は怯えもせずに、触れられることを受け入れた。
女はフッと笑い、「いい子ね」と呟いて、手を離す。
「あの子はまだ、知らないだけよ。いずれ、沈んでいく。…けれど、まだ染まっていない子をこの手で染めていくのもまた…格別よね」
頬に手を添え、うっとりと宙を眺めるその姿に、ぞくりとした。
…この手の客に買われると、それはそれは大事にされるだろうが、同時に厄介そうだ。
すぐには逃げられない、檻のなかへと閉じ込められる。
女はふぅ、とひと息つくと、俺を見て「また明日、改めて来るわ」と言った。
従者の男と共に、馬車へと向かう。
去り際、彼女はもう一度こちらへ振り返り、フッと妖しく笑った。
「また明日ね。…可愛い子達」
その言葉と視線に、子供達の身体が強張ったのを感じる。
すぐに馬車は動き始め、村の奥へと消えていった。



