若き店主と囚われの薔薇



「……………」


エルガはしばらく、何も言わなかった。

いや、言えない、という様子だった。

ただただ驚いた顔のまま、私を見ていた。


そんなエルガを見ていると、私までなんだか恥ずかしくなってきて。

…さすがに、差し出がましいだろうか。


「……ご、ごめんなさい。えっと、その、思わず言っちゃったというか…」


慌てて俯いて、謝る。

すると、エルガはハッとしたような顔をして、「…ああ」と低く返事をした。

そしてまた、トン、と軽く私の額を小突く。


「…馬鹿なことを、言うな。大体お前、どうやって届け屋になるかも知らないだろう」

「そ、それは…あ、そうよ!私はそれを、エルガに訊こうと思っていて…」

「俺が知るか」

「ええっ」


エルガが知らないのなら、私は一体誰に訊けばいいのか。


…というか、やはり、足りない考えだったか。

彼にとって、あの翡翠は大切なものだ。

簡単に、私などに預けられる訳が無い。

…良い案だと、思ったのだけれど。