若き店主と囚われの薔薇



…妹。

仲が良かったと、いうことだろうか。

この男がこんなにも、ひとりの奴隷に愛着を持ってしまうなんて、私は少し信じられなかった。


…けれど、その想いの証は、二度と届けられることはない。

エルガの諦めたような瞳にも、私は悲しくなった。


そしてそのとき、ひとつの可能性に思い当たって、私は顔を上げた。


「…じゃあ、私が」


目が合ったエルガが、驚いた顔をする。


…この気持ちは、なんだろう。

あのとき私に手を差し伸べてくれた、クエイトのことを思い出す。

彼も、こんな気持ちだったのだろうか。

私を一目見たばかりの彼は、明らかに私に興味のない顔をしていた。

もともと、奴隷なんてものは好きではなかったのだろう。

けれど彼は最後に、その綺麗な瞳を優しく色づかせて、私に手を差し伸べてくれた。

そのとき、私がどれほど嬉しかったか。