若き店主と囚われの薔薇



「どんなひとに、買われたの?」

「…あまり、よく覚えてないな。茶髪の男だった。年も若い。どこかの貴族という風ではなかった」

「怖そうなひと、だった?」

「いや。どちらかといえば明るかった。奴隷屋の客としては珍しいタイプだな」

「…………」


淡々と答えるエルガの横顔を、じっと見つめる。

…このひとは、もしかして。



「………彼女のこと、好きだったの?」



私の言葉に、エルガは目を丸くした。

そして眉を思い切り寄せ、軽く私の頭を小突いて来る。

ああまずい、怒らせた。

そうだと思ったのだが、どうやら違ったようだ。


「…馬鹿が。なんでそうなる」

「だって、贈り物をしたいと思うほどでしょう」

「……あいつは、そういうのじゃない。感覚でいえば、妹みたいなものだった」


十ヶ月以上店にいたからな、と彼は言った。