若き店主と囚われの薔薇



黙った私を見て、エルガは面倒そうにため息をついた。


「…『渡そうとしていた』わけじゃない。売れていった後に翡翠が手に入ったから、なんとなく加工し始めただけだ」

「…………」

「届け先もわからないのだから、贈ることもできないだろう」


その、どこか寂しそうな瞳に。

諦めた、色に。

私は、もどかしさを感じた。

もう二度と、渡せないなんて。


「…その奴隷って、女の子?」

「ああ。お前と同じくらいだ」

「………どんな、ひと…?」

「…この翡翠と、同じ色の髪を持ってる。…もう少し、青が入っていたかもな。あとは、橙の瞳」


髪の色を聞いて、私はなんだか親近感を覚えた。

…この深い緑の翡翠に、青が混じった色。

なんて珍しい髪だろう。

きっと、その髪色が原因で、奴隷になったに違いない。


私が来る五ヶ月前に、売れてしまった。

生きているかも、わからないなんて。