「…なかを見せていただいても?」
長い黒髪を揺らし、手入れのされた指の爪を口元に添え、俺に目線を寄越して来る。
俺は「もちろん」と微笑み、テントを開けた。
女は、テントのなかへぐるりと視線を這わせたあと、また意味深に笑う。
それを見て、赤髪の少女が怯えたように顔をしかめた。
奴隷を品定めするときの、客の目。
この世界に出入りする客の、独特の怪しい雰囲気。
それらに慣れている子供達は、微動だにしない。
ただただ、自分に声がかけられるのを待っている。
「ここは、子供ばかりなのね。…あら?あなた、珍しい髪を持ってるのね」
そう言って笑う女と目があったのは、赤髪の少女だった。
少女はびくりと肩を震わせて、うつむく。
女はそれに構わず、少女へ近づいた。
「…この国で、赤髪は珍しいのよ。ふふ、いい色ねぇ。あなた、私のところへ来ない…?」
口の端を上げた女が、少女の髪へ手を伸ばす。
しかし、少女は目を見開いて、そして瞳に涙を浮かべた。



