若き店主と囚われの薔薇



立ち上がると、バケツを持って、テントへと歩いた。






「開店するぞ」


いつものように、朝九時、俺は子供達へ声をかける。

子供達はその言葉を聞くと、寝起きの顔をハッと目覚めさせた。

そして俺と目が合うと、無言で小さく頷く。

…さぁ、今日も覚悟を決めろ。


気に入られる覚悟を、買われる覚悟を、新しい出会いへの覚悟を。



「……わ、たしは、どうしたらいいの」



子供達がいそいそと自分の場所で腰を下ろすなか、赤髪の少女は困惑していた。


俺は目を細めて彼女を一瞥すると、「適当に座っておけ」と言った。


「……………」

少女は眉を寄せながら、何もない空間に腰を下ろす。

それを確認して、俺はテントを開けた。






今日一人目の客は、貴婦人だった。

派手な洋服に身を包んだ女は、テントの前に馬車を止め、フフ、と微笑む。