携帯を手にとり、家に電話をしようとした時だった。 背後に人の気配を感じ振り向くと。 「やる…!」 ビニール傘を突き出しながら、私をジッと見ていたのは無愛想な、あの男だ。 「いえ…そんないいですよ。あなたも傘いるでしょ…」 断る私に向かって… 「やる…!」 の一点張りの男。仕方なく私はビニール傘を手にした。 「ありがとう」 私がお礼を言うと同時に、ドシャ降りの雨の中へ男は歩みだした。